2024/2/5
高血圧の方のED治療薬による勃起力増大を徹底解説
1.EDと生活習慣病の関係
生活習慣病は慢性的な脂っこい食事・肥満・過剰飲酒・喫煙・ストレス等が原因となり発症します。厚生労働省「患者調査(2020年)」(※1)では、生活習慣病は当時の約1.26億人の国民の3.7人に1人が治療を受けている罹患率の高い病気です。同調査での生活習慣病の罹患率の内訳は、高血圧性疾患47%、脂質異常12%、糖尿病12%、がん1%、心疾患9%、脳血管疾患6%、他3%です。特に心血管系生活習慣病(高血圧性疾患、心疾患、脳血管疾患)が62%と多くを占めており、中でも高血圧性疾患が47%と約半数を占める点はEDの発症原因との関係で注意が必要です。生活習慣病の初期症状としてEDの発症が見られるからです。本コラムでは生活習慣病原因の大半を占める高血圧性疾患(以下「高血圧」)に焦点を当て、高血圧を原因とするED(以下「高血圧ED」)の発症原因、効果的な高血圧EDの予防、治療について解説します。
(※1)2020年患者調査より試算→Table01.pdf (seikatsusyukanbyo.com)
2.高血圧EDの発症原因
【高血圧とEDの関係】
高血圧の有無とEDの関係を調べた海外の研究(※2)によると、高血圧患者のED有病率は正常血圧の方の約2倍になったとのことです。また、高血圧の重症度だけでなく、5年?6年以上など高血圧の期間が長引くほどEDのリスクも高まることが示唆されています。血圧レベルの違いによってEDの併発率が明らかに異なることから血圧とEDは密接に関係している可能性があります。
(※2)→高血圧における勃起不全の管理:ヒントとコツ - PMC (nih.gov)
【高血圧による動脈硬化】
高血圧の状態により血管がダメージを受けると動脈の内壁にコレステロールが付着・蓄積して動脈壁を厚くし動脈硬化を発症します。動脈硬化が起きると、動脈がしなやかに機能できなくなり、血液を運搬する能力が低下して血流悪化します。勃起は陰茎海綿体に十分な血液が流れ込むことで生じる現象ですから動脈硬化によって陰茎海綿体への血流が悪化すると、勃起に必要な血液が不足して勃起力低下を引き起こし高血圧EDを発症します。
【降圧剤によるED】
高血圧患者は血圧を正常範囲まで低下させるために、降圧剤を服用するケースがあります。しかし、この降圧剤自体がEDを誘発するリスクがあるのです。スウェーデンの1990~2006年のデータでは、薬の副作用としてEDの症状が出たという報告が225件あり、そのうち59件(26%)が降圧剤によるものでした。降圧剤の中で利尿薬、β遮断薬、交感神経抑制薬はED発症リスクが高いとされています。
〔利尿薬〕
腎臓に働きかけ利尿作用を促すことで血圧を低下させる降圧剤です。尿に含まれる亜鉛を体外に排出する働きがあり、亜鉛量が減ると性機能の基となるテストステロンと呼ばれる男性ホルモンも少なくなるため、勃起力が低下しEDを引き起こしやすくなります。
〔β遮断薬〕
自律神経に働きかけ、血管の収縮を防ぐ降圧剤です。性的刺激を脳から陰茎海綿体に伝達する際に重要となる神経伝達機能を弱め、陰茎海綿体に血液が十分に流れず、勃起力を低下させてしまいます。
〔交感神経抑制薬〕
自律神経に働きかけて末梢神経収縮を抑制する降圧剤です。神経伝達を弱める作用により、性的刺激を感じても勃起命令が脳から陰茎へ十分に伝わらず、勃起力が低下しEDを引き起こしやすくなります。
高血圧とEDの両方に悩んでいる方は、高血圧治療の専門医にED改善に取り組んでいることを伝え、適切な降圧剤を処方してもらうよう相談してみてください。
3.高血圧EDの予防
【高血圧の基準】
日本高血圧学会の高血圧診断基準(※3)では、高血圧は診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)90mmHg以上の場合に高血圧とされています。また自宅で測る家庭血圧の場合は、収縮期血圧(最大血圧)が135mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が85mmHg以上が高血圧とされています。
(※3)→日本高血圧学会(編).高血圧治療ガイドライン2019 本文ドキュメント.indd (jpnsh.jp)
【高血圧の現状】
高血圧は20歳以上の2人に1人が高血圧とされています。(※4)高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧とがあります。二次性高血圧は、甲状腺や副腎などの病気が原因で高血圧を起こすものをいいます。一方、大部分の高血圧は、それらの原因のない本態性高血圧で、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや遺伝的体質などが原因で起こると考えられています。日本人にとって特に要注意なのが食塩の過剰摂取です。2012年世界保健機構(WHO)のナトリウム摂取基準は成人5g/日に対して、2016年国民健康・栄養調査では日本国民の平均食塩摂取量が約2倍の平均9.9g/日でした。日本人の過剰摂取が顕著です。
(※4)→厚生労働省「国民・栄養調査(2019年)」001066903.pdf (mhlw.go.jp)
【高血圧EDの予防】
高血圧EDの予防では、下記の食事と運動による高血圧の予防・改善が基本になります。
〔減塩食〕
日本高血圧学会は、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることを強く推奨しています。(※3)日本人の食生活は食塩が多くなりやすい特徴がありますので下記の減塩食が有効です。
- かけ醤油、かけソースをつけ醤油、つけソースにして減塩
- 漬物は1回の量を減らし、麺類の汁は残し減塩
- 味噌汁は1回の量を減らし、具だくさんで減塩
- 新鮮な食材で薄味調理し減塩
- 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングで味付けし減塩
- コショウ、七味、ショウガ、かんきつ類の酸味で減塩
- 外食や加工品を控え減塩
〔DASH食〕
DASH食とは、高血圧の食事療法として注目されているDietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事法)の略語で高血圧の改善に高い効果があると認められています。日本人には上記の「減塩」と「DASH食」を組み合わせた無理のない長期間の食事療法が推奨されています。
〈DASH食のポイント〉
「高血圧に良い食品」を増やし、「高血圧に良くない食品」を減らすことです。
〈高血圧に良い食品〉
カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質を含む食品です。
・カリウムは、体内でナトリウムが増えると、尿での排出を促し血圧を下げます。 多く含む食品は野菜や果物、いも類、きのこ類、海藻類など。
・カルシウムは、マグネシウムや食物繊維と一緒に取ることで相乗効果が生まれ、 血圧が下がると考えられています。 カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンやプロビタミンDが分泌されるため、心臓や血管が収縮して血圧が上昇してしまいます。多く含む食品は牛乳・乳製品、大豆製品、小松菜など。
・マグネシウムはカルシウムの働きをバランスよく調整し、必要以上の血管収縮を 抑えたり、血管の拡張を促します。多く含む食品は種実類(アーモンドやピーナッツ)、玄米などの穀類、豆類(特に大豆製品)など。
・食物繊維は余分な糖質や脂質、コレステロールなどの排出を促す働きがあり、動 脈硬化予防におすすめです。多く含む食品は海藻や果物、穀類、豆類、野菜、きのこ類など。
・タンパク質は血管を丈夫に保つための大切な栄養素です。不足してしまうと血管 の弾力が失われ動脈硬化が進み、血圧上昇へとつながってしまいます。 脂質の少ない良質なタンパク質源の食品を選び取るように心がけましょう。多く含む食品は魚類(赤身)、肉類(赤身)、大豆類、卵類、乳製品など。
〈高血圧に良くない食品〉
飽和脂肪酸(肉類の脂身、鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪等)、コレステロール(鶏卵・魚卵、レバー・モツ等)を含む食品です。
〔適度な運動習慣〕
身体を動かすと、血液を運ぶ血管がしなやかになり、血圧を下げると言われています。ハードな運動は血圧を高めてしまうリスクがありますので、ウォーキングやジョギング等の軽度の有酸素運動が適しています。筋トレは、ED治療では男性機能を高める男性ホルモン分泌を促すために推奨されますが、高血圧治療としては血圧を高めますので避けましょう。
〔その他の対策〕
睡眠の改善、飲酒の抑制、禁煙、ストレス発散等(※5)も他の生活習慣病と同様に高血圧の改善に有効です。
(※5)詳しくは→薬以外でEDを治す方法はある?治療方法と日頃からできる対策
4.高血圧EDの治療
【ED治療薬の併用】
高血圧治療と同時にED治療も行いたい場合には、医師の指導の下でED治療薬の服用が推奨されます。ED治療薬として有名なバイアグラ、レビトラ、シアリスは、基本的には高血圧治療を受けている方も服用できます。しかし、高血圧治療とED治療を併行する場合には以下の注意点があります。
【ED治療薬併用の注意点】
〔規定の血圧を上回る場合〕
収縮期血圧(最大血圧)170mmHg以上または拡張期血圧(最小血圧)100mmHg以上の方は、ED治療薬は服用禁止です。高血圧でED治療を受けたい場合、まずは降圧剤で血圧を正常レベル付近まで下げましょう。
〔降圧剤との併用〕
降圧剤とED治療薬は共に血管を広げて血圧を低下させる作用があるため、同時に飲むと想定以上に血圧が低下してしまう場合があります。結果として、めまい、立ちくらみといった副作用が現れる可能性があります。
〔ニトログリセリン系医薬品との併用〕
ニトログリセリン系医薬品は硝酸剤とも呼ばれ、強い降圧作用を示し、ED治療薬と一緒に飲むと降圧作用が強く働きすぎてしまい、血圧が過剰に低下してしまうリスクがあるため、併用は禁止されています。
以上の注意点を回避するためには、高血圧治療の専門医とED治療の専門医の両方に相談
しましょう。
《最後に》
当院は、10年以上の診療実績、60万件以上の診療件数のあるユナイテッドクリニック・グループに所属しており、ユナイテッドクリニック・グループでは豊富な治療経験に基づく安全性・有効性・経済性に配慮したED薬治療(※6)を目指しております。勃起力に衰えを感じた際には、お一人で悩まず、当院の専門医師に、お気軽にご相談ください。皆様のご来院を心よりお待ちしております。
(※6)→安全性・有効性・経済性に配慮したバイアグラの入手方法を解説
監修者
院長 髙嶋 政浩
平成元年 | 杏林大学医学部医学科卒業 |
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平成元年 | 杏林大学医学部附属病院 |
平成8年 | 西部総合病院皮膚科・形成外科部長 就任 |
平成12年 | 大手美容外科クリニック |
令和3年 | ユニティクリニック |