2024/7/31

バイアグラの禁忌薬について徹底解説

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1.バイアグラとは

【誕生】

バイアグラとは、アメリカに本社を構えるファイザー株式会社により1998年2月にED(勃起不全)治療薬として世界で初めて製品化されました。有効成分は「シルデナフィル」、製剤名は「シルデナフィルクエン酸塩錠」、販売名である「バイアグラ」はファイザーの所有する商標登録名です。日本では1999年1月に厚労省より製造販売承認を取得し、1999年3月に発売開始され、2021年9月よりファイザーからヴィアトリス製薬に販売が移管されています。

【普及】

バイアグラは 2014年5月に国内特許が終了し、同じ有効成分で同等の有効性を持つジェネリック薬品の製造販売が可能になりました。誕生から20年以上経ちジェネリック薬として効果が安定しているため広く普及し、世界で最も有名なED薬です。ジェネリック薬品はバイアグラジェネリック錠、シルデナフィル錠と呼ばれています。

【購入】

バイアグラは市販薬の風邪薬のようには薬局では買えません。厚生労働省は来院診療またはオンライン診療以外での医師の診療のないバイアグラの販売は認めていません。市販薬として認められていないので医師の処方箋なしに薬局で購入はできません。バイアグラが市販で販売されていないのは、服用しても問題ないのか、医師が正確に判断する必要があるためです。したがって、医師の管理下にない「友人からもらったバイアグラ」「個人輸入したバイアグラ」の服用は避けましょう。

2.禁忌薬とは

【単独薬の場合】

「禁忌」とは、「してはいけないこと」という意味です。薬は本来、病気の治療に役立つことが目的ですから、使用によって大きな健康被害が生じることは避けなければなりません。持病があるなど特定の条件の人が服用した場合、身体に大きな健康被害が生じる可能性がある薬は、「禁忌薬」として定められています。

【複数薬の場合】

単独で服用した場合には問題がなくても、2つ以上の薬を服用した場合に、それぞれの薬が効かなくなったり、逆に効きすぎて副作用が強く現れたりする飲み合わせがある薬があります。これらは「併用禁忌薬」と言い、一緒に使うことが禁止されています。

3.勃起~射精~勃起収束のメカニズムとバイアグラの効果

バイアグラを服用してはいけない理由とバイアグラの禁忌薬を理解するためには、「勃起~射精~勃起収束のメカニズム」と「バイアグラの効果」を理解しておく必要があります。以下に説明します。

【勃起~射精~勃起収束のメカニズム】

〔勃起メカニズム〕

勃起は、陰茎内にある「海綿体」という血管の集まりに血液が流れ込むことで起こります。勃起メカニズムは以下のとおりです。

《勃起メカニズム》

・脳が性的刺激を感知すると、陰茎に信号が伝わり「cGMP(サイクリックGMP)」と呼ばれる物質が増加します。

・このcGMPにより陰茎の平滑筋(血管壁を構成する筋肉)がゆるんで陰 茎海綿体(スポンジ状の勃起性組織)の血流量が増大し、スポンジのように膨らみ勃起が起きる仕組みです。

〔射精のメカニズム〕

〈勃起と射精のメカニズムの違い〉勃起と射精はメカニズムが全く異なります。「副交感神経」が活性化するリラックス状態で陰茎が勃起し、反対に「交感神経」が「副交感神経」よりも優位に活性化した興奮・緊張状態で射精します。
〈射精メカニズム〉脳から交感神経を介して精嚢(せいのう)や前立腺、精管に刺激が伝わり、これらが収縮した結果、精液が尿道に押し出されることによって射精が起こる仕組みです。

《射精メカニズム》

・性的な刺激を受けて、精巣で作られた精子が送り出される

・精子が精嚢からの分泌液と混ざり合う

・前立腺に送られて前立腺液とも混ざり合い精液になる

・精液が膀胱側に逆流しないよう、膀胱頸部(膀胱の出口)が閉じる

・精液が尿道へ押し出される

〔勃起収束メカニズム〕
射精後は海綿体内の血液が流出して陰茎が柔らかくなり、勃起が収束します。いつまでも勃起状態が続くと日常生活に支障が出ますが、ヒトの体内には勃起を抑制する酵素「PDE5」が存在します。

《勃起収束メカニズム》

・陰茎海綿体の血管を広げて勃起を促す「cGMP」が、「PDE5」によって分解されることで勃起は収束します。

・cGMPとPDE5は全く逆の効果を持ち、「cGMP」が優勢になると勃起が起こり、「PDE5」が優勢になると勃起が収束に向かいます。

【バイアグラの効果】

バイアグラ(有効成分シルデナフィル)の効果は以下の2つです。

・PDE-5という酵素の働きを弱める作用

・血管を拡げて血流を良くする作用

〔PDE-5という酵素の働きを弱める作用〕
上述の【勃起収束のメカニズム】で説明したように「cGMP」が優勢になると勃起が起こり、「PDE5」が優勢になると勃起が収束に向かいます。したがって、勃起を促進するには、「勃起を収束させるPDE-5という酵素の働き」を抑えれば、勃起のサポートと継続の効果が期待できます。そのため、「PDE-5という酵素の働きを弱める作用」を持つバイアグラの有効成分シルデナフィルには、勃起力改善・ED改善の効果が期待できます。

〔血管を拡げて血流を良くする作用〕
〈狭心症治療薬〉もともとバイアグラ(有効成分シルデナフィル)は、狭心症などの心臓疾患の治療薬、血管を拡張して血圧を下げる薬として開発されました。しかし、治験の段階でEDにも改善効果があることがわかり、ED治療薬として開発が進められて現在に至ります。
〈ED治療薬〉バイアグラの有効成分シルデナフィルには、陰茎海綿体の血管平滑筋に対する一酸化窒素(NO)の弛緩作用を増強し、陰茎の血流を増加させることが認められています。そのため、バイアグラには、勃起力改善・ED改善が期待できます。
〔バイアグラの禁忌薬に関係する作用〕

〔血管を拡げて血流を良くする作用〕で上述したバイアグラの「血管を拡張して血圧を下げる薬の作用」が禁忌薬の判断に関係します。すなわち、バイアグラと同様に「血管を拡げて血圧をさげる作用」のある他の薬を同時に服用すると両者の血圧低下という重複した相乗効果で命を脅かすくらい血圧が急激に低下し過ぎてしまう可能性があるからです。

次に、こうしたバイアグラの禁忌薬について、詳しく説明します。

4.バイアグラの禁忌薬

バイアグラには相性の悪い病気飲み合わせが悪い薬などがあり、持病や服用中の他の薬の影響でバイアグラが体調に悪影響をおよぼすことがあります。バイアグラの医薬品インタビューフォーム(医療従事者向け専門資料)(※1)に基づき、【バイアグラを服用してはいけない人】毎に〔禁忌〕〔服用してはいけない理由〕を説明します。

(※1)→バイアグラ錠ODフィルム25mg50mg_インタビューフォーム (viatris-e-channel.com)

【狭心症の患者様】

〔禁忌〕
バイアグラと硝酸剤を初めとする一酸化窒素供与剤は併用禁忌
〔服用してはいけない理由〕
硝酸剤を初めとする一酸化窒素供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジルなど)は、NO(一酸化窒素)を増やして血管を拡張させる薬です。狭心症などの治療薬です。NOは血管細胞のcGMPを増やし、血管を拡張させます。バイアグラもcGMPを増やして血管を拡張する作用を持つため、併用するとこの作用が増幅され、危険なほど血圧が低下して、場合によっては死亡事故につながる恐れがあります。

【不整脈の患者様】

〔禁忌〕
バイアグラとアミオダロン塩酸塩は併用禁忌
〔服用してはいけない理由〕
アミオダロン塩酸塩は心臓の異常な興奮を抑えて脈の乱れを整える薬で、再発不整脈などの治療に使われます。PDE5阻害作用を持つED治療薬レビトラ(有効成分バルデナフィル)は、アミオダロン塩酸塩と併用すると心臓に悪影響を及ぼす恐れがあることが知られています。バイアグラでもPDE5阻害作用を持つため、同様のことが起こる可能性が否定できないため、アミオダロン塩酸塩との併用は禁じられています。

【慢性血栓塞栓性肺高血圧症や肺動脈性肺高血圧症の患者様】

〔禁忌〕
バイアグラとリオシグアトは併用禁忌
〔服用してはいけない理由〕
リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を刺激してcGMPの生成を促進する薬で、肺動脈圧を低下させる作用があり、慢性血栓塞栓性肺高血圧症や肺動脈性肺高血圧症の治療に使われます。バイアグラもcGMP の生成を促進する作用があるため、併用すると作用が増幅し、低血圧を引き起こす恐れががあります。

【重度の肝機能障害患者様】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
バイアグラは主に肝臓で代謝され、便の中に排出されます。肝硬変などの重度の肝機能障害があると、代謝・排出がなかなか進まず、バイアグラの濃度が過剰となり、問題を引き起こす恐れあります。そのため、重度の肝機能障害の方に対してはバイアグラの投与が禁じられています。

【低血圧または医師の管理下にない高血圧の方】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
バイアグラには血管拡張作用があり、服用すると血圧を低下させる可能性があります。血圧が「90/50mmHg(最高血圧/最低血圧)」未満の低血圧症の場合、バイアグラの服用で血圧が下がりすぎ体調を崩す恐れがあります。そのため、血圧が「90/50mmHg(最高血圧/最低血圧)」未満の人に対しては投与が禁じられています。
安静時最高血圧が170mmHgを超える人や安静時最低血圧が100mmHgを超える人がバイアグラを服用した場合、バイアグラの作用で血圧が急激に低下し、危険な状態が引き起こされる恐れがあります。そうした高血圧の人でも、医師の管理下で血圧がコントロールされていれば、併用する薬などに注意しつつバイアグラを服用できることがありますが、管理されていない場合はバイアグラを使用できません。

【最近6ヶ月以内に脳梗塞・脳出血を発症した方】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
脳梗塞・脳出血が起こると、脳の血液循環を一定に保つ自動調節機能に障害が生じるため、血圧が低下したときに脳の血液循環が低下します。バイアグラは血管拡張作用を持ち、血圧低下を引き起こす可能性があり、脳の血液循環に悪影響を与える恐れがあります。そのため、最近6ヶ月以内に脳梗塞・脳出血を発症した人に対してはバイアグラは禁忌とされています。

【網膜色素変性症患者様】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
網膜色素変性症は夜盲症(暗いところでは急激に視力が低下する症状)に始まり、徐々に視野狭窄・視力低下が進行し、最終的に失明に至ることもある遺伝病です。網膜に分布するPDE6に関わる遺伝子の異常が要因と考えられており、バイアグラはPDE6に対しても作用するため、網膜色素変性症の人に対してはバイアグラの投与が禁じられています。

【心血管系障害があり性行為不適切の医師の診断のある方】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
性行為時には心拍数・血圧・心筋酸素消費量が増大します。
心筋梗塞、心不全、不安定狭心症、生命に危険のある不整脈などの心血管系障害を発症した人は、性行為時の心拍数・血圧・心筋酸素消費量が増大することにより危険な状態に陥るリスクがあります。そのため、最近6ヶ月以内にそうした心血管系障害を発症した人に対してはバイアグラの投与が禁じられています。

【過去にバイアグラ服用でアレルギー反応がでた方】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
バイアグラの服用で皮膚などにかゆみや発疹といった免疫の過剰反応によって起こるアレルギー反応が起きる場合があります。過去にバイアグラでこれらの反応が起こったことがある場合、体の中にバイアグラの成分に反応する抗体ができており、バイアグラを服用するとさらに強いアレルギー反応が生じてしまう恐れがあるため、バイアグラを服用できません。

【未成年者】

〔禁忌〕
バイアグラは禁忌
〔服用してはいけない理由〕
バイアグラは成人を対象として開発された薬で、未成年に対しては効果や安全性について研究が行われておらず、臨床試験も実施されていません。そのため、未成年にはバイアグラは禁忌です。

5.バイアグラの誤った評判と正しい行動

【バイアグラは心臓に良くないという評判】

米国では1998年3月末に初めてバイアグラが発売されましたが、発売から7ヶ月の間に複数の死亡例が報告されました。そのうち、半数以上が心臓に関連する問題が原因であることが米国食品医薬品局(FDA)の調査によって明らかになっています。(※2)こうした発売当初の事例から「バイアグラは心臓に良くないという評判」が生まれました。

(※2)→バイアグラ関連情報 (mhlw.go.jp)

【バイアグラは心臓にやさしい薬】

しかし、バイアグラはもともと、狭心症の治療薬として心臓への負担を軽減することを目的に研究・開発された薬です。もともと心臓への負担を軽減するために研究・開発されたことを考えれば、医師の正しい管理下で服用すれば少なくとも心臓への負担を増やす薬ではないことがわかります。上記の米国の死亡例の70%以上は、高血圧・高コレステロール血症・喫煙・糖尿病・肥満・心疾患(狭心症、心筋梗塞等)の既往歴などの心血管系障害(心筋梗塞・狭心症・重篤な不整脈など)のリスク要因を有していました。(※2)バイアグラは、特定の薬物との相互作用や既往歴によって、心臓の重篤な障害につながる可能性があり、併用禁忌が多いため、心臓の障害につながる可能性があります。そのため、上記の米国の死亡例の70%以上を占めた心血管系障害を治療中の方の中には、医師による適切な指導による安全な服用が必要であった方が含まれていた可能性があります。

【バイアグラの安全な服用のための正しい行動】

〔先ず、性行為可能か主治医判断が必要〕
性行為は運動ですので血圧と脈拍が上昇し、心臓に負担がかかります。心臓への負荷は持病の有無など個人差が大きいですので、性行為が患者様の心臓に問題無いのかどうかを主治医に先ず確認しておく必要があります。また、狭心症、心筋梗塞や虚血性心疾患等、心血管系疾患の治療を受けられている場合は、硝酸剤投与の可能性があるため主治医にバイアグラを服用してもよいかを確認し、主治医の管理の下で服用してください。

〔次に、バイアグラ処方医師に服用薬を正確に伝達〕
心血管系障害の治療薬にはバイアグラとの併用禁忌が多くあります。素人判断は、思わぬ健康被害を招く恐れがあります。心臓の疾患がある場合はお薬手帳を持参のうえ、医師の判断を仰ぎましょう。特に、狭心症の薬である硝酸剤を処方されていて、狭心症の発作が起きたときのために硝酸剤を所持している場合は、バイアグラとの同時服用は厳禁です。

〔最後に、パートナーへの事前伝達〕
万が一、性行為中に狭心症の発作が起きた場合、本人が状況を説明できる状態とは限りません。バイアグラを服用中だった場合、応急処置としてバイアグラの併用禁忌薬であるニトロ(硝酸剤)が投与されてしまうと、最悪は命にもかかわります。このような事態を避けるためにも、緊急時に救急隊員や医師に対し、パートナーがバイアグラの服用を伝えられるよう、性行為前にパートナーにはバイアグラ服用を伝達しておきましょう。

6.バイアグラを服用する際に最も回避するべき禁忌薬

これまで、バイアグラと相性の悪い病気や飲み合わせの悪い薬を列挙してきましたが、それ以上に重要な注意点があります。

《重要な注意点》

バイアグラには医師でないと分からない相性の悪い病気や飲み合わせの悪い薬があります。
だからこそ、医師の管理下でバイアグラを服用することが最も重要です。
したがって、偽薬・不純物混入リスクがあり、死亡事例・重大な健康被害の報告もある「友人からもらったバイアグラ」「個人輸入で入手したバイアグラ」など医師の管理下にないバイアグラ(※3)は最も回避するべき禁忌薬です。

(※3)→バイアグラの安全な入手方法を徹底解説

《最後に》

当院は、10年以上の診療実績、60万件以上の診療件数のあるユナイテッドクリニック・グループ(※4)に所属しており、ユナイテッドクリニック・グループでは豊富な治療経験に基づく安全性・有効性・経済性に配慮したED薬治療(※5)を目指しております。多角的なED治療(※6)によって、EDにお悩みの患者様に寄り添うことを目指しております。EDでお悩みの場合は、お一人で悩まず、当院の専門医師に、お気軽にご相談ください。来院不要のオンライン診療(※7)を含め、皆様のお問い合わせ・ご予約・ご来院を心よりお待ちしております。

(※4)→法人概要

(※8)→安全性・有効性・経済性に配慮したバイアグラの入手方法を解説

(※9)→前立腺肥大症とEDの関係、多角的ED治療を徹底解説

(※10)→ED治療のオンライン診療とは?バイアグラやレビトラなど処方可能な治療薬も紹介

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監修者

院長 髙嶋 政浩

平成元年杏林大学医学部医学科卒業
平成元年杏林大学医学部附属病院
平成8年西部総合病院皮膚科・形成外科部長 就任
平成12年大手美容外科クリニック
令和3年ユニティクリニック