2024/7/26
グレープフルーツとED治療薬の関係を徹底解説
- ED治療薬服用の特別な注意点
【代表的ED治療薬の併用禁忌比較】 【併用禁忌の特別な注意点】 - グレープフルーツとED治療薬の併用
【グレープフルーツとED治療薬の相性】 【グレープフルーツがED治療薬効果を増強するプロセス】 - グレープフルーツと特に相性の悪い「レビトラ」
【レビトラの有効成分の吸収率が最も低い】 【レビトラはグレープフルーツによる過剰摂取リスクが最も高い】 【参考資料:吸収率の薬学的説明】 - フラノクマリン類の注意点
【相互作用の心配のある食物】 【相互作用の心配が少ない食物】 【ジュースの注意点】 【加工食品の注意点】 【お酒・アルコールの注意点】 【危険なグレープフルーツの摂取目的】 【安全な性行為のための注意点】
1.ED治療薬服用の特別な注意点
代表的なED治療薬にはバイアグラ(有効成分シルデナフィル)、レビトラ(有効成分バルデナフィル)、シアリス(有効成分タダラフィル)があります。それぞれ、一緒に服用すると重篤な副作用が発現する可能性があるため、併用して服用してはいけない下記のような「併用禁忌」があります。
【代表的ED治療薬の併用禁忌比較】
ED治療薬 (有効成分) |
併用禁忌 |
バイアグラ (シルデナフィル) |
硝酸剤及びNO供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アルミ、 硝酸イソソルビド、ニコランジル等)・アミオダロン塩酸塩(アンカロン)・ sGC刺激剤(リオシグアト:アデムパス)・グレープフィルーツ |
レビトラ (バルデナフィル) |
硝酸剤及びNO供与剤・sGC刺激剤(リオシグアト:アデムパス)・ 新型コロナ治療薬・抗ウイルス薬 (HIV治療薬)・内服の抗真菌薬・ 抗不整脈薬・ グレープフルーツ |
シアリス (タダラフィル) |
硝酸剤及びNO供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アルミ、 硝酸イソソルビド、ニコランジル等)・ sGC刺激剤(リオシグアト:アデムパス)・ グレープフルーツ |
【併用禁忌の特別な注意点】
代表的ED治療薬3剤に共通する併用禁忌として、普通の食品・果物である「グレープフルーツ」が含まれている点は、「日常生活で特に注意」が必要です。
2.グレープフルーツとED治療薬の併用
【グレープフルーツとED治療薬の相性】
グレープフルーツに含まれる成分が、服用したED治療薬の有効成分を分解し、適切な有効成分吸収量に調整する体内酵素の働きを弱め、 ED治療薬有効成分が過度に体内に吸収され、ED治療薬の作用を大幅に増大させるリスクがあります。そのため、バイアグラ・レビトラ・シアリスなどのED治療薬とグレープフルーツの相性が悪いとされています。果物のグレープフルーツの生果汁・果肉だけでなく、特に濃縮グレープフルーツジュースは果汁が濃縮されているため、上述のリスクがさらに増大する懸念があります。ED治療薬をグレープフルーツジュースで服用するのは避けましょう。
【グレープフルーツがED治療薬効果を増強するプロセス】
人間の身体には、外部から体内に侵入した物質を分解するシトクロムP450 3A4 (CYP3A4)という酵素が存在しています。ED治療薬は、小腸から有効成分が吸収されますが、その際に本来ならば小腸(小腸上皮細胞)にある代謝分解酵素「CYP3A4」によって、一定量の有効成分が分解・不活性化され、血液中に入る有効成分量も適切な量に削減されます。しかし、グレープフルーツ中の「フラノクマリン」はこの「CYP3A4」酵素の代謝・分解作用を阻害する作用があり、本来は酵素によって分解不活性化されるはずの有効成分まで分解されずに血液中へ入るため、薬の吸収量が大幅に増大し、想定外の過剰摂取状態になる可能性があるとされています。また、代謝も遅れ本来よりも長く体内にED治療薬有効成分が残留します。これらにより血中濃度が増大し、思いもよらぬ副作用が出る可能性もあるので注意が必要です。
- グレープフルーツのフラノクマリン
- CYP3A4酵素の代謝分解作用を阻害
- ED治療薬有効成分の代謝分解を阻害
- ED治療薬有効成分の想定外の吸収増大
- ED治療薬の過剰摂取・重大副作用発症
ED治療薬のバイアグラ・レビトラ・シアリスは3剤とも「CYP3A4」によって分解される有効成分ですので、上述のようなプロセスで、グレープフルーツによる相互作用 (複数の有効成分の飲み合わせによって効果が増強される作用)を非常に大きく受けることになります。結果として想定よりも高濃度のED治療薬有効成分が血液に流れ込み、過剰摂取と同様の状態となることで副作用のリスクが高まります。
3.グレープフルーツと特に相性の悪い「レビトラ」
上述した、グレープフルーツとED治療薬の同時摂取による、有効成分過剰摂取リスクの大きさは、バイアグラ、レビトラ、シアリスで異なるとされています。では、リスクの大きいED治療薬はどれなのでしょうか?以下に説明します。
【レビトラの有効成分の吸収率が最も低い】
代表的ED治療薬3剤であるバイアグラ(有効成分シルデナフィル)、レビトラ(有効成分バルデナフィル)、シアリス(有効成分タダラフィル)は、口から服用して、小腸から各有効成分が血液中に吸収されます。この血液中に有効成分が吸収される割合は、バイアグラ、レビトラ、シアリスで同水準ではなく、 以下のデータ(※1)があります。
レビトラ15% < バイアグラ41% < シアリス53%
したがって、レビトラが最も有効成分の吸収率が低いといえます。
(※1)→詳しくは下記の【参考資料:吸収率の薬学的説明】参照
【レビトラはグレープフルーツによる過剰摂取となるリスクが最も高い】
ED治療薬の有効成分は、代謝分解酵素「CYP3A4」によって、血液中に入る有効成分量が削減され、吸収率が低下します。グレープフルーツ中の「フラノクマリン」は、CYP3A4による有効成分の吸収率を低下させる働きを阻害するため、本来は酵素によって分解不活性化されるはずの有効成分まで分解されずに血液中へ入ることになります。その結果、有効成分の吸収量が大幅に増加し、薬剤の想定外の過剰摂取となるリスクが増大してしまいます。つまり、吸収率の低い薬剤ほど、有効成分の吸収量が増強してしまう余地が大きくなります。そのため、有効成分の吸収率の最も低いレビトラが、最も吸収率が増大してしまうリスクが高いことになります。バイアグラ、レビトラ、シアリスの中で、レビトラが最もグレープフルーツと相性が悪いといえます。 (※1)
【参考資料:吸収率の薬学的説明】(ご参考ですので、ご興味のない方は飛ばしてください)
バイアグラ、レビトラ、シアリスの有効成分の吸収率の大小は、血中濃度で判定できます。そして、この血中への吸収率の大小を判断する指標として、「バイオアベイラビリティ」があります。バイオアベイラビリティ( bioavailability、生物学的利用率)とは、服用した薬物が全身循環(血液中)に到達する割合を表わします。薬物が静脈内に直接投与される場合、そのバイオアベイラビリティは100%となります。一方、薬物が口からの摂取される場合は、有効成分が全身循環(血液中)に到達するまでに肝臓などで代謝・不活性化されるためバイオアベイラビリティは100%から低下することになります。バイアグラ、レビトラのヒトによる生物学的利用率は、各薬剤のインタビューフォーム(※2)より以下のとおりです。なお、シアリスについては、ヒトによるデータはなくラットによるデータになります。(※3)
〔ED治療薬3剤のバイオアベイラビリティ〕
レビトラ15%(ヒト)<バイアグラ41%(ヒト)<シアリス53%(ラット雄)
(※2)→バイアグラはバイアグラ錠ODフィルム25mg50mg_インタビューフォーム (viatris-e-channel.com) 、レビトラはIF (sawai.co.jp)
(※3)→530471000_21900AMX01084_I100_1.pdf (pmda.go.jp)
4.フラノクマリン類の注意点
フラノクマリン類はグレープフルーツジュースだけでなく多くの食物に含まれ、それぞれの食物と薬剤との影響度は組み合わせによって異なります。グレープフルーツでも種類がたくさんあり、産地や収穫時期による違いもあります。同じような柑橘類でもフラノクマリン類を含む量には違いがあります。柑橘類以外でも含まれていることがあります。
【相互作用の心配のある食物】
〔柑橘系〕夏ミカン・ダイダイ・サワーオレンジ・ブンタン(ザボン)・絹皮(安藤みかん)・スウィーティー・ハッサク・晩白柚・金柑・ライム など
〔柑橘系以外〕イチジク・ざくろ など
【相互作用の心配が少ない食物】
温州みかん・カボス・バレンシアオレンジ・マンダリンオレンジ・ネーブル・日向夏・レモン・ゆず・リンゴ・ブドウ・など
【ジュースの注意点】
相互作用の強弱は摂取する量が問題となります。果肉一切れとジュースでは含まれるフラノクマリン類が異なります。ジュースを作るにはグレープフルーツが複数個必要です。通常、ジュースは濃縮還元されていますので、ジュースに含まれるフラノクマリン類量は多くなり、相互作用が増強するリスクが高まります。
【加工食品の注意点】
グレープフルーツの果肉、生果汁、濃縮ジュースだけ注意しているのでは注意が足りません。グレープフルーツを含むジャム、マーマレード、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、シャーベット、飴・クッキーなどのお菓子類などの加工食品にも注意が必要です。
【お酒・アルコールの注意点】
お酒が好きな方で、焼酎などのお酒にグレープフルーツ生搾り果汁を入れてたくさん飲む方、グレープフルーツハイサワー缶を多く飲む方がいますが、その後、ED治療薬を服用しての性行為は要注意です。
グレープフルーツサワーを飲んだ後、ED治療薬を服用しての性行為は危険です。
【危険なグレープフルーツの摂取目的】
ED薬の有効成分の吸収率を意図的に高め、ED治療薬の勃起効果を強化するためにグレープフルーツジュースを飲む方もいるようです。例えば安価なバイアグラ25mgとグレープフルーツを同時摂取して、フラノクマリンによる相互作用で高価なバイアグラ100mgの効果を期待する方もいるようです。これは危険ですので絶対行わないでください。フラノクマリン類の相互作用による有効成分の血液中への吸収増大は個人差が大きく、予測不能なため重篤な副作用が出て出てしまうため大変危険です。
ED治療薬を服用する予定がある場合には、少なくとも2日前くらいからグレープフルーツやグレープフルーツジュースを控えましょう。
ED治療薬の勃起効果を意図的に強化するために、水ではなくグレープフルーツジュースでED治療薬を服用するのは危険です。
【安全な性行為のための注意点】
グレープフルーツなど、多くの柑橘類に含まれる、フラノクマリン類が、消化管における薬物代謝酵素の働きを阻害することにより、薬物の血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなると言われています。一般的に、代謝酵素の阻害作用は、2~3日持続すると言われていますので、薬物と同時に摂取しなければ良いというわけではありません。
ED治療薬を服用して性行為の予定がある場合には、少なくとも2日(24時間)、安全を考慮するならば3日(72時間)前から、グレープフルーツなどの柑橘類の摂取には注意をしましょう。
《最後に》
当院は、10年以上の診療実績、60万件以上の診療件数のあるユナイテッドクリニック・グループ(※4)に所属しており、ユナイテッドクリニック・グループでは豊富な治療経験に基づく安全性・有効性・経済性に配慮したED薬治療 (※5)を目指しております。多角的なED治療 (※6)によって、EDにお悩みの患者様に寄り添うことを目指しております。EDでお悩みの場合は、お一人で悩まず、当院の専門医師に、お気軽にご相談ください。来院不要のオンライン診療 (※7)を含め、皆様のお問い合わせ・ご予約・ご来院を心よりお待ちしております。
(※4)→法人概要
(※5)→安全性・有効性・経済性に配慮したバイアグラの入手方法を解説
(※6)→前立腺肥大症とEDの関係、多角的ED治療を徹底解説
(※7)→ED治療のオンライン診療とは?バイアグラやレビトラなど処方可能な治療薬も紹介
監修者
院長 髙嶋 政浩
平成元年 | 杏林大学医学部医学科卒業 |
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平成元年 | 杏林大学医学部附属病院 |
平成8年 | 西部総合病院皮膚科・形成外科部長 就任 |
平成12年 | 大手美容外科クリニック |
令和3年 | ユニティクリニック |